摩天楼の売春をめぐる、「ヤバい社会学」

デジタルコミュニケーション・デヴァイスの普及によって、アンダーグラウンドビジネスも着実に進化している。『ヤバい社会学』の著者であるスディール・ヴェンカテッシュが、変わりゆくNYの売春事情について290人のセックスワーカーたちに徹底取材した!
摩天楼の売春をめぐる、「ヤバい社会学」
Sexy woman lying in backseat of car photo from Shutterstock

シカゴの麻薬密売組織の懐に飛び込み、アメリカの地下経済、社会の実態を体当たりでリポートした『ヤバい社会学』の著者スディール・ヴェンカテッシュが、今度つけまわしたのは、ニューヨークの売春婦たちだ。

スディールは1年以上をかけて290人のセックスワーカーたちを取材。デジタルコミュニケーション・デヴァイスの進化によって「売春」は、「アウトドアのビジネス」から「インドア」にシフトしつつある。

以前ほど危険ではなくなりつつあるこの「ビジネス」は、中流階級の女性の参入を促すようになっているとスディールは語る。

1.アウトドア派 vs. インドア派

流しのセックスワーカー:

  • 1回の交渉で平均75ドルを手にする

  • 2年に1度は留置所に入れられる

  • 1年に平均4回は殴られる

  • 安全のためにポケットナイフを携行する

  • ドラッグを買うために働いている エスコートサーヴィス:

  • 1回の交渉で「流し」の150%の金額を手にする

  • 警察との接触はほとんどない

  • 1年に平均2回は殴られる

  • 念のため顧客の勤め先を調べておく

  • 服や靴を買うために働いている 2.エリアごとの価格表


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3.ポン引きの現在

1999年にマンハッタンで取材した11人のポン引きはすべて4年以内に仕事を失った。就職したのはうちひとり。その男性にポン引き生活で得たことは?と聞いたところ、「いいブロウジョブのためなら男は何でもするってこと。その知識が実生活でどんな役に立つかって? さあね」

4.学歴と仕事

取材した多くの女性は高校卒業とともにニューヨークにやってきた。ほとんどが昼間の仕事をもっている。

・学歴

  • 高校は卒業 83%

  • 一次大学に 53%

  • 大学も卒業 19% ・仕事

  • 飲食 47%

  • 小売店店員 43%

  • アート関係(ダンス、演劇など) 11%

  • 出版(コピーライター、校正・校閲など) 9% ※ 上記の数値は、重複する回答もあるため合計が100%以上となっている

5.アップグレードする

「豊胸をうまくやれば収入は50%増になるわよ」と、ある女性は語る。以下のことでも、自分の商品価値を上げることができる。

1: 金髪にする 2: ホテルの従業員と友達になってスイートルームを安く確保する 3: ブラックベリー。顧客にとって、ブラックベリーはプロフェッショナリズムの証し。ドラッグ中毒、性病もちでないことを印象づけることができる

6.商売道具

いつも持ち歩くもの

  • 携帯2台:自分の権威を誇示しようとする男に1台を奪われる可能性があるので

  • 予備のパンティ:記念に持ち帰る男も多いので

  • バンドエイド:怪我や痣などに備えて

  • ガム:「リステリン・ストリップ」に忠誠を誓う人も

  • コンドームと潤滑剤:コンドームの使用を拒んだ場合、料金は25%上乗せされる 絶対に持ち歩かないもの

  • 携帯電話:個人連絡先が分かってしまうものは持たない

  • ID:偽の住所を記した偽のIDを携行する人も

  • 銀行カード、クレジットカードほか個人情報が記載されているあらゆるもの

  • 100ドル札:「100ドル札で払うようなバカにはお釣りをもらう資格ないわ」

  • 小額紙幣:「20ドル札の釣りをもらいたがるようなバカは泥棒と一緒よ」 7.モバイル事情


  • 70% ブラックベリー
  • 19% iPhone
  • 11% その他のスマートフォン