緊急鼎談!震災の不安とニセ科学(前編):ニセ科学問題はどう変わったのか?

※今回はいつものとらねこ日誌とは趣向を変え、以下の3人による、緊急(?)討論会の模様をお送り致します。3人で激しく議論した内容を黒猫亭さんに座談会形式にまとめて頂きました。ニセ科学問題(?)にコミットする3人が抱いた、震災前後の変化とは?どうやって変化に対応するか・・・このままでよいのか?などを熱く語りました。どうか最後までお付き合い下さい。

今回の登場人物
どらねこ:このブログを運営する宇宙動物。食と健康関連のブログの筈が脱線が多いのが悩み。最近はむいみさんの人気に嫉妬気味*1であると謂う。


黒猫亭:読むと目が痛くなる「黒猫亭日乗」の管理人で愛称はクロネコッティ。複雑な問題の論点整理には定評がある。今回は座談会のまとめ役を快諾してくださった。
http://kuronekotei.way-nifty.com/nichijou/


むいみ:みんなが忘れた頃に更新される神出鬼没な「azure blue」の管理人で腐女子ツイッターではむいみんと呼ばれ、おぢさまのアイドル的存在である。
http://kuroha.blog.shinobi.jp/



どらねこは考えたのです。

この前ニセ科学批判について書いたエントリにはたくさんのアクセスを戴いたし、嬉しいブコメもいっぱいもらいました。いろいろ考えて凄く苦しんでアレを書いた甲斐がありました。でもごめんなさい、私は呆れる程に欲張りで自分大好きなフリーダム猫なのです。もっと褒められたいんです。もっともっと、褒めて褒めて褒めまくられたいんです。褒められたい・・・あ〜も〜ホメられたいっ!

そんなわけで、どらねこは日頃仲良くしてもらっている二人のトモダチ*2をお招きして、面と向かってホメてもらうことに決めました。なぁ〜に、あの人たちのことだから、どらねこご自慢の美味しいキノコとホヤで釣ればすぐに来てくれることでしょう。・・・おや、話をすればにゃんとやらです。早速玄関のインターホンが鳴りました。きっとあの二人に違い有りませんよ・・・。


■エサに釣られてやってきた
むいみ: こんにちわ! きたよ!

黒猫亭: 罷り越して*3ござる。

どらねこ: いらっしゃいモフモフっ!!
黒猫亭: なんでも美味いキノコとホヤをご馳走戴けるそうで、それを楽しみに地獄を見たと思って遙々最果ての北の国に推参仕りましたよ。

むいみ: そうだね、ぼくも楽しみだよー。キノコは好きだけどホヤはきらいだけどね。ついでに言うとホヤは生まれてから一度も食べたことなんかないんだけどね。でもたぶんきらいだよ、うん。

黒猫亭: えっ、それじゃあキミは一体ナニしに来たんだ?

むいみ: だって、どらちゃんが「一週間待ってくれれば本物のキノコとホヤを食べさせてやるモフぅ〜!」って大見得切るんだもん。楽しみだよね、ぼくが今までに食べてきたキノコって本物じゃなかったんだなー、全然知らなかったよ。ホヤは生まれてから一度も食べたことがないけどね、たぶんぼく、今まで食べたことのないものってたいがいきらいだよ。楽しみだなー。

どらねこ: ・・・えっ? あ、あれ? そうだっけ? 今日は昨日山に行って採ってきたポルチーニ*4を「うそっ!*5」と謂うほど惜しげもなくふんだんに使ったお下品なパスタと、獲れたてほやほやの新鮮なホヤをほやっと焼いてご馳走しようかと思って用意しているんですけど・・・

むいみ: ポルチーニ茸もホヤも食べたことないわー。食べたことないからたぶん97%くらいの確率できらいだわー。でも、本物のポルチーニ茸とか本物の焼きホヤとかはニセモノとは違うんだよね、きっと美味いんだろうなー。すごく楽しみだよー、早く本物のポルチーニ茸と焼きホヤを食べさせてよー。

どらねこ: (プルプルプルプル)た、多分美味しいと思いモフ・・・

黒猫亭: (・・・この子はアレか、「一週間待ってくれ」と謂うのは単なる時間稼ぎの常套句で、単に「普通よりちょっと美味いもの」が出てくるだけだと謂う昭和な約束事を識らないのだな・・・)

どらねこ: ・・・(コホン)えーとですね、実は本日ご両所に拙宅へお越し戴いたのは、日頃のご愛顧に感謝を込めて心尽くしのオモテナシをしたいと謂う事なんですが、それだけじゃなくて・・・えへへ(チラチラッ)、あの、私がこの前上げたエントリについてご両所のご高閲を賜りたいと、このように愚考致しました次第にてございましてですね・・・。

むいみ: あれ、そうなの? ぼく、そんな話全然聞いてないから何も考えてきてないよ。ぼく、何も考えてないとナチュラルに攻めとか受けとかリバとか総受けとか掛け算順序問題とかぐぇへへへたまんねぇー*6とか腐ったこと口にするけど大丈夫かなー?

どらねこ: ・・・そ、その辺は書記役の黒猫亭さんに全部お任せしてありますから、大丈夫だと思いモフ・・・ねえ、黒猫亭さん?

黒猫亭: (チッ)丸投げかよ・・・はいはい、武士の情けで腐ったセリフはオフレコにしてやるから、思う存分ぐぇへへへしたまえ。

むいみ: そうなのか、じゃあ安心したよ。それより、この辺のテキストってどうせクロネコッティさんが導入部としてでっち上げた設定紹介のためのフィクションなんでしょ? このノリで真面目な話するのってつらくないかなー、つらいよねー?

黒猫亭: ・・・誰がそこまでメタフィクショナルなセルフリファレンスをしろと言った。新人類*7腐女子はこれだから扱いづらいぜ。これはな、キミのことをご存じない読者に向けて面白可笑しくキャラ立てして印象附ける目的と、この後延々糞真面目な会話が続くから、せめて導入部で小芝居を入れて読者を掴んでおかないと不安で不安でボクたまんないんですぅ、と謂うアクセス乞食流の小心な配慮なのだよ。

むいみ: えっ、「シンジンルイ」ってなに? NEXT能力者とかそんな感じなのかなー、ぼく、電撃とか変身とか火炎放射とかハンドレッドパワーとかできないんだけどなー、記憶操作ならちょっとできるけどなー、相手が記憶を完全になくすまでひたすら強く殴り続けるだけだけどねー。

どらねこ: あのう、導入部の小ネタはもうお腹いっぱいですので、そろそろ本題に入って戴いて宜しいでせうか・・・

黒猫亭: はいはい、じゃあみんなもうネタはいいから真顔になろう。

 キリッ!

 キリキリッ!
 キラーン!

むいみ: どらちゃんて、真顔になると形とか色とかずいぶん変わっちゃうんだねー、知らなかったわー、知らなかったからたぶんきらいだわー。

黒猫亭: 未知のアイテムをヘイトしてdisるのはたいがいにして、とっとと本題に入るぞよ、そこの穢れなき純心なお嬢様よ。

むいみ: うん、わかったよ。さて、どらちゃんおつかれさま、かなりの長文エントリだったんでブログを間違えたかと思っちゃった。長かったけど、最後まで一気に読んじゃいました。やっぱり行間のおかげかなー、世間にはあれより長くてぎっしりで読むと目が痛くなるいやがらせみたいに真っ黒な糞ブログ*8とかあるけどそれより全然マシだったよ、うん。

黒猫亭: ・・・如何にもついでみたいにお座なりなアテコスリーを入れなくてもいいから。うん、あれはとらねこ日誌にしては随分長いエントリだったけど、これまでの遠慮を捨ててかなりハッキリとニセ科学批判に対するステートメントを出した印象だよな。面白かったですよ。




■震災がすべてを変えたのか
どらねこ: おホメに与って滂沱の感涙モフ〜。本日はあのエントリで書かせて戴いた様な事柄についてお話をしたいと思うのですけれど、まず、所謂ニセ科学*9を取り巻く現状について・・・なんてお題ではどうお考えですか?

黒猫亭: そうだなぁ、震災後の状況については、オレの感じ方ではやっぱりこれまでよりもかなりカジュアルな感じでニセ科学が受け止められている印象なんだけれど、これは今年になってからの変化なのかな?

むいみ: ぼくはほとんど震災の影響がなかった地域で暮らしてるので、あまり震災前後で状況が変わったという意識はないんだよね。

黒猫亭: そうか。でも、ネットの状況と謂うことなら地域的な格差はないよね。たとえば最近は「ネットコミュニケーション」と謂えばツイッターが主流的なツールなんだろうけど、オレは今年から始めたので長期的な状況の変化はわかんないんだよね。その辺、どんな感じなのかな?

どらねこ: 今は根拠が定かでない代替療法の活動が活発化して、今迄そんな能書きを掲げていなかったのに急に放射線への効能を謳うようになってきたような状況が有ると思うんですが、そんな根拠の無い言説を広めるような善意のツイートが横行しているように思います。不安で不安でたまらないヒトが「もしかしてコレは効果あるかも」みたいな軽い気持ちでツイートする様な事って有ると思うんです。ヒトの「もしかしたら」と謂う気持ちは侮れないモチベーションですからね。

むいみ: ニセ科学と呼ばれてるもの、たとえばホメオパシー*10とかEM*11なんかはすごく柔軟に「放射能」に対応してきたよね。それが普段はニセ科学に縁のない人たちの間にするするっと自然に入り込んできてるんだと思う。

黒猫亭: 例のエントリでもそう謂う話があったけど、今は去年までとは全然状況が違うよね。原発事故前ならアヤシゲなものに手を出さなかったはずの極普通の人々までもが、強い不安感の故にニセ科学に対する敷居が低くなっている印象だよね。

むいみ: 不安を感じてる人は、なんでもいいから効果があるものを試してみたいだろうし、ニセ科学のほうはそれを見越して手を広げてるから、周りを見回したらそこに普通にニセ科学がある、みたいな状況になってるのかも。

どらねこ: それには、コミュニティなどによる口コミの影響が強そうですよね。他の人たちと不安を共有したいと謂う気持ちが関係しているのかもしれません。放射能の様な得体の知れない不安に対抗するには神秘的なモノのほうが印象が良いかもしれませんから、そう謂うニーズにニセ科学が上手くマッチしたのでしょうね。

黒猫亭: なるほど、その辺はニセ科学側のマーケティング戦略がこの混乱に乗じて上手く奏功しているってことなんだろうな。ニーズがあってサプライがある、みたいな関係なのかもしれん。

どらねこ: それに加えて、ニセ科学にハマる人たちって、どちらかと謂うと平均的な方に比べて向上心が旺盛だったり、勉強熱心だったりするんですよね。そう謂う人たちがツイッターを媒介に情報を収集したり拡散したりしていると謂う状況なんではないかと私はみています。ですから、「ニセ科学にハマるのは情報リテラシー科学リテラシーがないからだ」と謂う様な批判は的外れだろうと思うんですよ。

むいみ: そうだね。不安に思ってる人ほどよく勉強してるので、コミュニティの情報交換でそういうネタを仕入れてくるんだろうね。放射性物質による汚染なんて、ぼくらにとってほぼ未知の状況なわけだから、科学的な見方からすると日常レベルでできる対策ってほとんどないじゃん。そうすると、その不安な気持ちとどうつきあっていいかわかんなくなってるんだと思うんだよね。

黒猫亭: それにしても、TLを視ていると人々が完全に二極化していて、ニセ科学を批判する人とカジュアルにニセ科学を受け容れている人に二分された印象なのだけれど、震災前はここまで極端な構図だったっけ。

むいみ: 以前から「国は信用できない」と考えてる層はいたと思うけど、ハッキリと対立構造ができたことが震災後の大きな特徴なのかな。対立構造というか、どちらも対立したいと思って対立してるわけじゃないけど、いわゆる「御用学者*12」は「安全だ安全だ」とばかり言ってて本当の被害を隠してる、と思われてるんだよね。

どらねこ: 不安なヒトが欲しいのは「安心」の保証ですからねぇ、それに応えるのは難しいです。「国は信用できない」と謂う世論については、原子力施策を推進してきた自民党に責任が有ると思うのですけれども。その辺りをマスメディアがどう伝えたかが大きく影響しているような気がします。

むいみ: 今までは国が原子力政策を推進してきたんだから、国に親和的な態度をとる人は「加害者」を擁護してるように思えちゃうのかなあ。

黒猫亭: 国と謂うかおおまかに「制度」と謂ったほうがいいのかな? 人々の日常的な安心感は制度に対して無意識の信頼感を抱いているから得られるわけで、それが崩壊したことで、何を信頼していいのかわからなくなったと謂うことがあるかもね。

むいみ: ホントに「制度に対する信頼感」なんてあったのかな?

黒猫亭: だから「無意識の」となるわけ。たとえば、電車なんか事故を起こすと凄く怖いよね。クルマだってみんなが勝手に運転しているんだから、ホントは怖いはずだよね。でもみんな乗っているのは制度に対する無意識の信頼があるからで、それは多分、原発も同じだったんだろう。一旦事故が起こると物凄く危険なものが目の前に存在すると謂うことはみんな知っていたんだよ。そこで時々小規模な事故が起こっていて、それが度々隠蔽されていたことも。「けしからんことだ」「怖いことだ」と思っていた。でも、みんな大筋では「大丈夫だろう」とも思っていた。ところが、大丈夫じゃなかったんだよね。

むいみ: そっか。「大丈夫だろう」というのは無根拠な希望的観測なんだけど、責任をもって管理してるのは自分たちじゃなくて、国とか制度みたいなよくわからない強くて大きなものだから、それを考えないで済んでたということなんだろうね。起こってみて初めてその思い込みには具体的な根拠なんかなかったってことに気づくんだ。その反動で一気に「裏切られた! だまされてた!」「あのときも隠蔽していたんだから、今度も隠蔽してるに違いない!」ってなっちゃうんだろうね。

どらねこ: 国や制度が信じられないなら何を信じるかと謂う事で「身近な信頼できそうな人」の言葉を無条件で信用すると謂う事になるのかもしれませんね。もしくは「敵の敵は味方」メソッドで、敵である国家を攻撃するヒトを無条件に英雄視してその言説を信用してしまうのかも。自分を含む周りを見渡せば、完璧にルールに則って行動できているわけじゃないなんて事は簡単に気がつく筈なのに、国や制度のような大きなものには完璧であることを求めてしまう。その辺りに大きな危険があるのだと思います。

黒猫亭: 国も制度も大枠で言えば信用に値すると思うけど、完璧じゃないよね。勿論、原子力行政についても綺麗事ばかりじゃない、舞台裏には汚い利権構造があったりするんだろうし、「絶対安全神話」だって嘘だった。それは事実だとしても、それはイコール「完璧じゃないから完全に信用出来ない」ってこととは違うよね。




■そして科学者は責められる
どらねこ: 今のように平常時とは謂えない状況に陥れば、専門的な科学教育を受けていない方々は混乱した行動をとる事が予測されますよね。その場合、それに対処できるのは、科学について訓練を積んできた人々であってもオカシクナイと思うんですね。ところが実際は科学者や科学に詳しい人々に期待される役割が機能しているように見えないばかりか、逆に混乱した人々を痛めつけているようにも見られていますね。

黒猫亭: そうだね、特定の専門的訓練を受けた人間は社会的リソースとして特定の社会的責任を負わざるを得ない。これが大前提としてあるから、科学者に対しても現状に対するコミットへの強い期待感がある。

どらねこ: ええ、科学者に対して「国の味方をするな」とか「何をやってるんだ」と謂う様なキビシイ批判的な意見が多いのは、科学者に対する期待感の裏返しみたいなところもあると思いますね。

むいみ: 社会からの期待はあっても、そもそも震災はともかく原発事故については未曽有の出来事だから、慎重で誠実な科学者であればあるほど不用意な発言はできないと思うんだよね。

黒猫亭: そうだね、科学と謂うのは世界を厳密に記述する方法論だから、科学者の言葉は現実の厳しさや先行き不透明感の代弁者になっている嫌いがあるわけだよね。現実に対する反撥がそれを代弁する科学者に対する反撥に重ね合わされている嫌いはあるんだろうな。

むいみ: 決定的に信頼されなくなったのは「原発メルトダウンを起こしていない」という趣旨の発言じゃないかな。たぶん「科学者は安全だと言ったのに放射性物質が飛散したじゃないの!」というその反動が続いてる気がする。

黒猫亭: そこはターム論の範疇の問題で「メルトダウン」と謂う言葉に拘っても意味がない、と謂うのが事故発生当時の菊池誠さん*13の主張だったよね。

むいみ: そう。「メルトダウン」を「爆発」と定義するとやっぱり起こってない。だけど、燃料棒が溶けて圧力容器が破損したことを「メルトダウン」と定義すると起こったことになる。だから「メルトダウン」なんて言葉を使うと混乱するだけだからやめましょう、という話があったよね。

黒猫亭: それと、期待されている安全性のレベルが「ゼロリスク」だったのに、現実には相対リスクの話になっちゃってゼロ一〇〇のレベルの問題じゃなくなった。そこが不信感に繋がっているところはあるかもしれない。

むいみ: でも、実はぼくらが思っているほどゼロリスクは求められてないのかもしれないよ。普通の日常生活にともなうリスクはいいんだけど、「上乗せのリスク」はゼロにしたい欲求はあるんだろうと思う。だから放射線のリスクと比較してタバコやCTなんかを持ち出すと「そういうことじゃない! ぼくらの言いたいことを理解してない!」とか言われてた気がする。タバコやCTは自分でコントロールできると思われてるんだよ、ホントはそうじゃないけどね。

黒猫亭: なるほど、コントロール可能性の問題か。そうすると、問題はリスクやハザードの妥当な秤量ではなく、自由意志の問題になるのかな。

どらねこ: だから必死にコントロールを求めて、デトックス*14などに走ると謂う事になるのでしょうね。

むいみ: 地震津波だったら自然災害だからしかたがないとあきらめることができる。けれど、原発事故はある意味人災ととらえることが可能なので、それを防ぎきれなかった東電や国へ矛先が向かう。「事故がなければ放射性物質のついた食品を食べることもなかったのに・・・」というわけ。

黒猫亭: 煙草やCTは自分で選んだリスクなのだから、それはリスクのレベルがどの程度でもどうでも好い。気に入らないのは、自分で選んだわけでもないリスクを圧し附けられて、それが自分ではどうにも出来ないこと、と謂うことかな。それと、人間は自分が蒙った損害に対して責任主体が想定出来ればそれを非難すると謂うことだろうと思う。

むいみ: 東電や国の責任を過剰に追及するのはそういう意識だと思うよ。

どらねこ: ゼロリスクが求められていると謂う事ではなく、信頼できる相手に「安心していいよ!」と声をかけて欲しいのだと思います。人々が求めているのは科学の話でもなんでもなくて「大丈夫だと約束したんだから、ちゃんと守れよ」と謂う気持ちなのかもしれませんね。




■「敵の敵は味方」じゃない
むいみ: 原発の「絶対安全神話」は科学者の間でも批判されてたよね。「絶対安全」なんてことがありえないことくらいわかってるはずなのに。行き場のない憤りを抱えてうずくまるより、たとえ糾弾という形でもだれかにその思いを伝えるほうが楽になるんだろうな。ところで、「絶対安全神話に科学者が加担した」というのは本当なんだろうか?

どらねこ: 絶対安全神話に科学者が加担した事になっているから、正義の科学者として、アノヒトやアノヒト*15が持て囃されているんじゃないでしょうか。事実としてこれまで「原発は絶対安全だ」と散々宣伝されていて、広報冊子には安全性について科学的な説明が為されているわけです。科学的な説明をするのは科学者ですから、科学者が介在した事自体は事実でしょう。

黒猫亭: 全部が全部積極的に「絶対安全神話」の醸成に荷担したかどうかはよくわからんのだけどね。科学者が個人の倫理観に基づいて附言した留保は常に無視されるものでさ。科学者は情報を提供することしか出来ないから、都合の好い情報だけが採用され、都合の悪い情報は無視される。まあ、そう謂う状況に過適応する科学者もいるだろうけどね。

むいみ: ふむ。絶対安全神話の崩壊と、それを指摘できなかった、あるいは積極的に推進した科学者の信頼性が低下したのは事実だろうな。だったら、今求められてる科学者像ってどんなものなんだろう? たとえば、武田邦彦氏は今でもいちおう原発推進派なんだよね? 彼が信頼を得たのは何がきっかけだったっけ? 一部では「正直に危険性を伝えたこと」が評価されたと聞いたことがあるけど、あれは「正直に告げた」のではなくて「妄想を垂れ流した」だけだよね。

どらねこ: 単にテレビ露出じゃないですか。テレビ的な演出があって、それに応える軽さを持ち合わせていたとか。

むいみ: 食品関係では「福島県産野菜は全部ダメだ」「牛乳はダメだ」「だけど牛肉は大丈夫だ」というような無責任な発言にけっこう振り回された印象がある。人々が求めている科学者像が、ぼくにはよくわかんないんだよね。一般的に人気のある武田氏とか小出氏みたいなものなのかな?というところから推測するしかないわけで、実はあの辺のセンセイ方には全然興味がなくて、どんな層が支持してるのかすらもよくわかってないのだけど。

どらねこ: ウチは宅配生協やってますけど、チラシを視ると反原発的な講演会などが盛んに行われている様ですよ。生協は反原発の為ならなりふり構わない印象ですね。

むいみ: ぼくは、生協というと食品の放射性物質の測定とかそういう活動しか見てなかったからなあ。でも、今はたしかに状況的にどうしても反原発運動のほうが勢いがあるよね。べつに反原発運動そのものがアヤシイなんて思ってないけど、反原発に紛れてニセ科学が入りこむこともあるんだよね。それと、科学者や国への不信みたいな二項対立や敵味方思考も気になってる。国VS国民、御用VS市民、みたいなアレ。

どらねこ: 敵味方思考って、特定の一部の問題なのに、全体が問題であるかのように錯覚させるところがありますよね。「敵の敵は味方」メソッドっていつからあるのでしょう。

黒猫亭: それはもう、春秋戦国以前の大昔から。やはりそれだけ人間の組織観にマッチした思考なんだろうな。

むいみ: ぼくは「御用学者」の根がだいぶ深いと思ったけどなー。彼らが当初に「安全だ」と言ってたレベルを遥かに超えてしまったものだから、その後にいくら妥当なことを言ってても「国のため東電のためだろう」と歪められて受け取られちゃってるんだよね。

黒猫亭: とうとう「カネもらってる」って話にまでなってるからな。「国からカネもらってなかったら国に味方するわけがない、だからカネもらってるに違いない」と謂うのは鉄壁の循環論理だな。

むいみ: まあ、「自分がその立場だったらお金をもらわないとやらない」ということなんだろうね。ぼくは「鏡の中に映った自分は醜かった」という告白だと受け取ってるけどさ。

どらねこ: 自分が善意なら、それに敵対する相手は悪意でないとモチベーションは下がるかも知れないですね。

黒猫亭: 正しさは悪が存在するとわかりやすいからね。それとは別に、まあたとえば東電や国家とは違うところからだとして、カネもらって科学コミュニケーションをやることが悪いことなのかと謂う別の問題性もある。

むいみ: 正当な研究や事業に対する対価としてお金が動くこと自体は悪いことではないよね。でもさ、「安全です」とか、もんじゅの広報キャラとか、広報施設とかにかけたお金については、この状況では批判したくなるのも当然かな、とも思う。

どらねこ: 実際、原子力広報・教育予算から業務委託費をもらって広報業務を受注している新聞社があって、その新聞社は現在も原子力発電を擁護する記事を掲載し続けているわけですから、そう思われても仕方のない部分はあると思います。

むいみ: お金をかけたことに対する批判は当然あるとして、それを立証せずにだれでもかれでも「金をもらってるから味方するんだ」と決めつけるのはどうなんだろう?

どらねこ: それは論外ですね。実際にもらっていた新聞社*16とはまた違う話で。公の場でそんな事を謂う行為は批判されてイイと思いますよ・・・あ、ところで、折角のお話に水を挿す様で申し訳無いのですが、ちょっとこの辺でお食事にしませんか? お約束通り、とっても美味しいポルチーニ茸と焼きホヤをご馳走しますよ。

黒猫亭: そうだな、オレも喋りすぎて腹が減った。そもそもそっちのほうが今日の集まりのメインの目的だったわけだしな。

むいみ: うん、楽しみだなー。早く食べたいなー、たぶんきらいだと思うけど、早く本物のポルチーニ茸と焼きホヤ食べさせてよー、たぶんきらいだと思うけどねー。

どらねこ: はいはい、ちょっと待っててくださいね、ボクは料理にだけはかなり自信があるんですよ。その上食材が最高で獲れたて新鮮と来ているのですから、万が一にも失敗はありません、ご期待有れでございますよ!

むいみ: ・・・あ、ちょっと待った。ぼくたち、これまでかなりしゃべってるような気がするんだけど、まだ話が全然核心にいってないよね。それで書記役がクロネコッティさんなんでしょ? ぼく、なんか今得体のしれない不安を感じてるんだけどなー。

どらねこ: ・・・ぎくっ!

黒猫亭: まーまーまーまー、キミたちゃーそんな面倒臭ぇーこと考えなくてもいーんだよ! 万事このオレに任せておきゃー心配なし! ささ、そんなことよりどらちゃんお手製の美味いメシを喰おうぜ、はっはっはっはっは・・・





(むいみんの不吉な予言は当たった! 待て!風雲急を告げる次回!!)

*1:新聞を読んでいると猫が新聞に乗って寝ころぶアレである

*2:厭くまでどらねこの認識であり、相手はどう思っているか不明。

*3:昨年、罷り路を歩みかけたと謂う・・・。

*4:ヨーロッパでは人気のキノコであるが、日本ではソレほどでもない。ちょっと郊外に行けば簡単に採ることができる。

*5:美味しんぼ12巻「黄金の意味」参照。

*6:以上全てフジョシ界では基本的な用語らしいのですが、生憎どらねこはフジョシでは無いのでよく分かりませんでした。

*7:ロクジュウネンダイ生まれの黒猫亭氏世代が若かりし頃のバブル期にこう呼ばれていたそうですので、多分バクゼンと「自分よりうんと若い人」くらいの意味でつかっているのでしょう。

*8:http://kuronekotei.way-nifty.com/

*9:どらねこはこちらのページで示されているような意味で用いておりますhttp://www39.atwiki.jp/cactus2/pages/14.html他の二人とはニュアンスが違う可能性がありますが、大きな差は無い模様です。以下「ニセ科学」と表記。

*10:「同種療法」と訳される代替医療の一種で、科学的には「効果が無いことがほぼ完全に証明されている」ものの一つです。医療忌避に結び付き易い性格が問題視されています。http://www.asahi.com/health/feature/homoeopathy_0828_01.html参照。

*11:琉球大学の比嘉照夫教授が開発した有用微生物群の名称です。元は土壌改良材として開発されたもので、その用途では効果が有る様ですが、現在は「何にでも効く魔法の杖」の様にニセ科学的な使い方もされている様です。

*12:元々は「権力者に媚び諂って政府に都合の良いことを言う学者」の様な意味でしたが、最近では「政府や大企業の批判に都合の悪いことを言う学者」の様な意味で使われているみたいです。派生語に「エア御用学者」があるそうなのですが、どらねこには定義がムズカシすぎて理解できませんでした。

*13:ニセ科学」と謂う用語を定義した方で、ご存じニセ科学批判の第一人者です。クロネコッティさんによると、肩書きは「キラキラ☆愛され御用学者ランキング堂々第一位! 大阪大学物理学教授&テルミン奏者」だそうです。

*14:detoxificationの事。全てでは無いが多くはその有用性が実証されていない。銅を蓄積してしまうような先天性の病気であればキレート剤で吸着・排出させる治療法に効果が確認されているが、健康な人が普通に生活を送るうえでの必要性については今のところ無さそうである。

*15:思いついた名前をあてはめてみましょう。

*16:下野の最中らしい