<オールスターゲーム:全パ5-0全セ>◇第3戦◇24日◇Kスタ宮城

 全パの日本ハム斎藤佑樹投手(23)が大投手たちに仲間入りした。6回から今回の球宴2度目の登板。1イニングを3人で片付けた。第1戦の1回2/3に続き、登板2戦とも無失点。過去球宴に出場した新人投手で、2試合以上投げて無失点だったのは、村山実(阪神)権藤博(中日)堀内恒夫(巨人)ら9人しかいない。今年、10年ぶりに3試合行われた「恩恵」を手にした佑ちゃん。ファンに夢を与えた選手に贈られる「スカイアクティブテクノロジー賞」も受賞し、車1台をゲットした。

 ご褒美をきっちりゲットしたあたり、やはり“持っている”男だった。「びっくりしました。なんか申し訳ないです」。球宴3試合で2試合に登板。2回2/3を投げて無失点の成績が車1台に化けたサプライズに、佑ちゃんは照れ笑いを浮かべた。

 6回。きれいに整備されたマウンドに、満を持して背番号18が立った。心地よい歓声に、全身で浸った。「改めてオールスターの雰囲気を味わおうという気持ちだった。前回のマウンドと違って緊張せず投げられました」。バレンティン(ヤクルト)村田(横浜)らセ・リーグのスラッガーを前にしても、ひるまない。外いっぱいへの真っすぐに、縦に大きく変化するスライダー。わずか9球で3者凡退に仕留めた。

 プロ1年目。球宴に「プラスワンチャレンジ」で選出され、“最後の1人”としてスター軍団に滑り込んだ。初めて経験する夢舞台は緊張の連続だった。22日の球宴第1戦(ナゴヤドーム)では、同僚の武田勝が打ち込まれてイニング途中からスクランブル登板。「突然だったので緊張もしていたし…」。1回2/3を無得点に抑え全セ打線の勢いを止めたものの、必死で楽しむ余裕などなかった。

 とにかく突っ走ってきた。もともと読書家で、早大時代は大企業の創業者や政治家など、スポーツ界だけでなく各分野で活躍する人たちの“リーダー論”を好んで読んできた。しかし、プロ入り後は漫画派に。移動の際も片手には漫画。硬派な内容の本をじっくりと味わうことができないほど、心が疲れ切っていた。それでも、球宴という夢舞台に立ち、スタンドにいる少年野球の子どもたちの姿を見たことで、また気持ちを新たにすることができた。

 斎藤

 何年か前は、自分があの立場だった。プロになったという実感がわきました。

 球宴で2試合以上に登板し、無失点に抑えた新人投手は史上10人目。村山、権藤、堀内ら、そうそうたる顔ぶれに並んだ。日本野球機構(NPB)の財政難から、今年は10年ぶりに3試合開催になり、2試合以上の登板がしやすい環境だった。来年はまた2試合制に戻る見込みで、まさに「ピンポイント」で獲得した勲章だ。

 後半戦初登板は8月2日ロッテ戦(札幌ドーム)が濃厚。「真っすぐは自信を持って投げられた。しっかりローテを守って、優勝につなげられるように」。貴重な経験を経て、黄金ルーキーがまたひとつ、大投手への階段を上がった。【中島宙恵】