半導体や液晶などのデバイスメーカーは、露光装置、ドライエッチング装置、成膜装置、CMP装置、洗浄装置、検査装置などを、それぞれを専門に開発している装置メーカーから購入する。

 その購入のあり方は、「異常」である。デバイスメーカーと装置メーカーの立場は、対等とは程遠い。デバイスメーカーは、装置メーカーを奴隷扱いしているとしか言いようがない(場合が多い)。今回は、そのような異常な装置購入を巡るお話である。

耐え忍ぶしかない装置メーカー

 半導体や液晶用装置というのは、非常にデリケートな精密機械である。したがって、デバイスメーカーに装置を搬入して、電気、ガス、水の配管などを繋ぎ、スイッチを入れたらすぐに使用可能・・・ということにはならない。

 例えば、ドライエッチング装置の場合、加工速度はどうか、加工均一性はどうか、微細加工性はどうか、連続加工性はどうか、安全対策はなされているか、など(非常に膨大な)チェックポイントをあらかじめ決めておき、それらをすべてクリアしなくてはならない。

 これらチェックポイントを「検収条件」と言い、すべての検収条件をクリアすることを「検収を上げる」と言う。検収を上げないとデバイスメーカーは装置代金を支払わない。したがって、装置メーカーはなるべく早く検収を上げようと努力する。

 ところが、デバイスメーカーはなかなか検収を上げないのである。検収データにあれやこれやと難癖をつけるのは日常茶飯事。時には検収条件にはないことまで強要する。そして、検収をずるずると引き延ばすのである。

 このような装置は1台数億~十数億円もする。最先端の露光装置に至っては50億円もする。これを数台~数十台立ち上げて、なかなか検収が上げてもらえない。その間、装置メーカーには一銭もお金は入ってこない。

 また、立ち上げ期間が延びたからといって、その費用を装置代に上乗せしてくれるなんてこともない。そして、めでたく検収が上がったとしても、なぜか装置代金の支払いは「検収後6カ月後」と決まっている。これは日本だけの商習慣のようだが、なぜこのようなことになっているのか、理解に苦しむ。この間、装置メーカーはひたすら耐え忍ぶしかない。まったく理不尽である。