日本再生へ開国促進、生産性向上を 経済財政白書
与謝野馨経済財政担当相は22日の閣議に、2011年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を提出した。日本経済は東日本大震災からの復興という課題を抱えたが「震災前からの課題にも取り組むべきだ」と強調。人口減少で内需の先細りが避けられず、海外需要を取り込むグローバル化への取り組みが他国に比べて遅れていると指摘した。日本経済の復興・再生には生産性向上がカギを握るとの認識も示した。
副題は「日本経済の本質的な力を高める」。まず震災が実体経済に及ぼした影響を点検した。サプライチェーン(供給網)の寸断などで被害が全国に波及し、経済全体の供給力を示す潜在国内総生産(GDP)が1%程度、実質年率換算で約6兆円失われたとの試算を盛り込んだ。
白書は震災復興を当面の課題としたうえで「震災前から抱えていた中長期的課題が解決されていない」と指摘。その1つにグローバル化への対応を挙げた。輸出主導型の日本経済だが、名目GDPに対する輸出入額でグローバル化の度合いを測ると、ドイツや英国、韓国より低い。自由貿易協定(FTA)の締結が広がらないことを例に挙げ「世界経済の成長を貿易を通じて生かす貴重な機会を逃してきた」と批判した。
グローバル化は海外需要を獲得できるほか、「国内の生産性を向上させる」というメリットがあると指摘。研究開発投資の拡充に比べて、生産性を引き上げる効果が2倍大きいと分析した。
財政面では、復興対応での支出増が避けられないが、中期的な健全化の枠組みを堅持するよう求めた。経済協力開発機構(OECD)諸国の過去の財政再建の事例を調べ、「再建中に必ずしも成長率は低下しない」との分析を紹介。増税や歳出削減が経済成長の足かせになりかねないとの主張をけん制した。
日本企業の研究開発投資のあり方にも言及した。「研究開発の効率性」として、企業のもうけ(付加価値)が過去の投資の何倍になるかを算出。日本はOECD諸国の平均より3割低く、投資が収益に結びついていないとした。投資が新技術の開発に偏っていたためで「マーケティングを担う人材の育成やブランド構築への投資を増やすべきだ」と強調。震災前からの弱点克服を急ぐよう訴えた。