雇用コストと賃金低迷と | ニューノーマルの理 (ことわり) Powered by Ameba

雇用コストと賃金低迷と

米国内における「消費市場の二極化」、「偏ったインフレ」をレポートする自分ですが、その兆候は加速している。


米、最富裕層の所得大幅増 格差拡大浮き彫り


デモの拡大が「現実」を表している訳だが、29日には来月のG20を睨んで、ロビンフッド税導入を求めた世界的デモを実施するらしい。ウォール街への反感が、金融取引課税導入へと段々「八つ当たり感」が隠せなくなってきた。以前にも言及したように、デモ参加者の中でも「意識の二極化」が生じているのだろう。


それはそうと個人所得の軟調が続いている。商務省発表の9月個人所得は、市場予想0.3%増を覆す0.1%増となったようだ。自分は、可処分所得の推移を「経済のダイナモ」と位置付けている訳ですが、今月も3ヵ月連続でマイナス数値が示されている。(インフレ調整値)

という事で商務省から。


PERSONAL INCOME AND OUTLAYS: SEPTEMBER 2011 ニューノーマルの理


家計バランスシートの負債率が可処分所得比で、ずっと是正を続けている、と言っている自分ですが、しつこく言うように今現在その数値は、「110.9%」(第2四半期)。 是正の長期低迷すら示されているのが実情だと言える。


9月米個人消費支出は0.6%増、貯蓄率は07年12月以来の低水準

「所得の増加がない限り、こうした状態の維持は難しい」。第3・四半期は自動車生産と販売の増加で成長が一部押し上げられたと指摘。第4・四半期に向け明るい気分にはなれないとし「経済のどの部分にも成長の大きなけん引役は見当たらない」(スイス再保険の首席米国エコノミスト/カート・カール氏


実際の消費状態を指標から読み取る事は難しい訳ですが、アッパークラスの所得が増加しているのであればそういう事であり、限定された消費が支出されたようだ。前日示したコーチの増益 なんかはそれを示しているのだろう。 しかし記事が指摘しているように、ここで問題なのは全般的な所得の低迷になる。BLSが同日に発表した「雇用コストインデックス」が、何よりその賃金低迷を表す結果となっている。


米雇用コスト指数:第3四半期は2年で最小の伸び-賃金低迷

米国の7-9月(第3四半期)の雇用コスト指数は、ここ2年で最も小幅な伸びにとどまった。 雇用コスト全体の約7割を占める賃金・給与は前期比0.3%上昇と、ここ1年で最も小幅な伸びにとどまった。前年同期比では1.6%上昇だった。ブルームバーグ


という事でBLSから。


EMPLOYMENT COST INDEX –SEPTEMBER 2011

Compensation costs for civilian workers increased 0.3 percent, seasonally adjusted, for the 3-month period ending September 2011, the U.S. Bureau of Labor Statistics reported today. ニューノーマルの理

ここ数ヵ月は軟調の軌道を描いている。簡単にいえば負債が大きい中、マクロ的賃金は上がっておらず、由々しき事態が継続している事になる。記事にあるように、この1か月のみ富裕層が貯蓄を削って車を買った、とか単純な理由から消費が上がった事が大袈裟に報じられているようだ。(いつもの事だが)


ちなみに9月コアPCEデフレータは前年比+1.6%で8月から抑制されている。おそらく、企業コスト指数の低迷は続く事だろう、ディスインフレが鮮明化してくれば、「上辺の緩和政策」も実行しやすくなる。09年より長期国債をバカみたいに買い付けたFEDだが、一般家計にその効果は全く届かない。「黄金のバット」を使ったとしても空振りが続けば全く意味は無い、という事です。