質問:「大変です!!地球の軌道上に直径16キロの球状のUFOが止まっているそうです。太陽の横に見えています。もしかしたら、惑星ネビル?」
回答:「最初の記事で話したでしょう。明るい天体を撮る時は、ゴーストが写りやすいって(笑)。2度目の話になりますので、今回は「実測」をして見ましょう。」 |
説明:
問題の動画はこれですね。
「LARGE ORB UFO or SPHERE NEAR SUN Spencer Butte, Eugene, Oregon October 22, 2011」
エレニン彗星に限らず、ゴーストが写真や動画に写って、(一部の人が)大騒ぎ(?)する例が後をたちませんね。今回はそんなゴーストを見破る方法として、「実測」をやってみましょう。
原理:
ゴーストは、画面中央を対称として、明るい天体の反対側に写ります。逆に、明るい天体とゴーストの中間点は、画像中央になります。これでゴーストかそうでないかは、「だいたい」わかります。
ただ、正確に求めようとすると、ちょっとやっかいです。なぜなら、光学系(レンズ)によって「画面中央」が画像のどの位置(XY座標)になるか変わってくるからです。
この問題も、明るい天体とゴーストをわざと写しこんで、測る方法で解決します。
しかし、今回は撮影に使用したレンズが手元にありません。どうしましょうか?
ここは発想を変えて、天体の位置が違う複数枚の画像から、中間点を求めることにします。もしゴーストでしたら、それらの中間点は、同じ座標になるはずです。これにより、ゴーストかそうでないか見極めができます。
(今回やった)方法:
1)問題の動画を、フルスクリーン拡大で画面いっぱいに表示する。
2)適当な時刻の画像を、キャプチャーする。
3)キャプチャーした画像から、謎の物体の中心座標と、太陽の中心座標を読みとる。
4) 2つの中心座標の中間点の値を求める(足して2で割る)
5) 複数枚の画像で、4)の結果を比較する。
6) 比較して一致していたら、ゴースト(バンザーイ)。そうでなかったら、頭をかかえて悩みこむ。(うーん)
注意:
比較する画像は、同じ拡大率で撮影した画像どおしを使うこと。ズーム倍率が変わると、「画面中央」の位置が変わる場合があるので、比較できない。
結果:
問題の動画は、ズームを3段階に変えて撮影されていました。同じズーム倍率では、ほとんど動きがなかったのですが、なんとか2枚選んで、実測してみました。
結果は以下の表のとおりになりました。
画像にかきこんでみました。これでイメージがつかめるかと思います。
謎の物体と、太陽は違った位置にあるのに、中心座標はほぼ、誤差の範囲内で、同じところにあります。
よって、この謎の物体を、太陽のゴーストと結論づけます。
尚、これが何か球体状の物体とした場合でも、陰影のつき方が太陽の向きからずれてついています。なので、ゴーストを知らなくても、これおかしいじゃん、とわかりそうです。
もっとも、この動画が、はじめから合成されたものという可能性もあります。そのときは、「ゴーストに見えるように作成された合成映像」ということで、作者はなかなか手の込んだ事をやっていることになります。人づきあいの悪い私ですが、このくらい、オタッキー、職人的な人なら友達になってみたいものです。(本当はイヤです)
考察:
今回、詳細に書きませんでしたが、ズーム倍率を変えると「画面中央」の座標が変化していることがわかりました。光学系の「くせ」ですね。これより、どのような光学系を使用しているか割り出すことができるかもしれません。詳しい人いらっしゃいましたら、教えてください。
追記(10/29):カメラ、レンズの情報は、Youtubeのコメント欄に記載されていました。
・・・ということで、MOMOさんが自身のブログ「拾いもの」(http://ameblo.jp/momosuke-1213/entry-11057819282.html
)で教えてくれた件の回答とします。MOMOさん、KATYAMさん、いかがでしたでしょうか?
やり方はしっかり教えましたので、次回からはこちらに振らずに、自分達で検証してくださいね。
それから、MOMOさん、これを「水星」だと言うのは、あまりにも星のことを知らなさすぎます。(ひょっとして、わざと言っています?)ネットばかりやっていないで、実際の星を見ましょう!!(星の本を読んでもいいです)
おしまい
追加:(2013/3/7):
上で書いた、天体とゴーストの中間点を求める方法で、もうひとつ「演習」をやってみましょう。
題材はこれです!!
2013年2月14日未明に、関東地方6か所で撮影された、火球の動画(集)です。高感度ビデオカメラで非常によく撮影できています。タイトルにある、「小惑星2012DA14の接近の1日前」というのは、この動画をどこからか持ってきてアップロードした人がつけた、思わせぶりなもので、もちろんこの火球は、2012DA14とは関係ありません。
問題の箇所は、17秒から21秒にかけての部分です。上の画像のとおり、派手なゴースト(フレア)が生じて見えています。
さてご多聞にもれず、これをまた、「UFOだ!」と騒いでいる人がいるわけで、そのようなものをここでひとつリンク貼っておきます。
それでは、火球とゴーストの中間点を求めてみましょう!!といっても、火球が非常に明るくてその中心がどこかはっきりしません。そこで、火球の中心をえいやで求め、ゴーストとの中間点を求めました。そして解析した画像すべてで、この中間点が同じになるように調整しました。いろいろ試行したところ、中間点の座標は(322,189)付近になるようです。
そのようにして、上の例と同じようにしてゴースト、中間点、火球の先と引っ張った線を画像に書き入れました。
解析には、ほぼ0.4秒におきにキャプチャーした4枚の画像を用いました。
これら4枚の画像をみて、線の先は火球の中心に突き刺さっていることを確認してください。
ゴーストがもう一度反射されてか、左上にもうひとつゴーストが見えている。
以上のように、ゴーストと火球は中間点をはさんで対象の位置にあることがわかりました。これで解析はおわりです。
これら動画は、高感度CCDカメラとUFOキャプチャーという、画像をキャプチャーするソフトウェアのシステムで撮影されたものです。現在、日本の幾人かのアマチュア天文家の人たちが協力しあって、このシステムで、流星、火球観測のネットワークをつくっています。
今回の火球もすでに詳細な解析がすすんでいます。こちらからどうぞ。
当然のことながら、学術的な分析です。
先に、あげた「UFOだ!」と騒いでいる人たちは、人様の動画を自分の都合のよいように取り上げて、撮影・解析をされた方に失礼ではないか、と思います。だいたい他の動画を見れば、「UFO」は映っていないことに気がつくはずなのに・・・と思って「 2/14 東京にも隕石ミサイルが!? 」 を読んでみると・・・・
「細かく動画を分析してみると、他の動画には同じようなのは出ていないし、こりゃレンズフレアかなぁ?とも思いましたが、(後略)」
と「他の動画にない」「レンズフレア」にも言及して書いてあるではありませんか。なんだぁ、この人、知っていて書いてる。えっ、ということは、
この人、UFOだと本気で信じているんだぁー
いやいや、実はこれ、
本気でUFO信じているというふりを見せるためのフェイクだったりして・・・
謎は深まるばかりです・・・(^^)
余談(2011/10/29追加):
太陽と太陽のように見える天体の映像を見て、なにか見たことがあるぞー、この既視感は何なんだ、と思っていたら、思い出しました。これです。
「スターウォーズ エピソード4」に登場する、惑星タトゥイーンの夕暮れの風景、いやこれはけっしてゴーストではありません。(合成ですけど)ここの星系は太陽が2つあるのです。
実は、この場面、私がスターウォーズの中で一番好きな場面です。いや好き、というより、一番共感を覚えるところです。
この前のシーンで、主人公のルーク・スカイウォーカーは、育ての親である叔父さん夫妻に、「この惑星を出てよその星に行きたい」と、言うんですが、叔父さんは、「ダメだ、お前はここの農場を引き継ぐのだ」と、にべなく反対されてしまいます。そして、上の場面になります。荒涼とした惑星タトゥイーンの風景と、地平線下に沈もうとしている二重太陽。
叔父さんに反対されて、気落ちしたルークが歩いていく。そこへ、流れる物悲しいメロディ、
♪ターラーラーラー、ターラーラッラッラ、ラララーラー
「こんな、こんな星で、僕は、一生を過ごしていくのか・・・」と、ルークの心情が聞こえてくるようです。
これを観た私は、全くもってして、青年期の悩みというものは、たとえ地球から遠く離れた太陽が2つあるような見知らぬ辺境の星であっても地球と同じで、これは時空を超えて全宇宙共通のものなのだな~と、共感を持って考えたものでした。私も若いころのことです・・・
おわり
※皆様のご感想、ご意見をお寄せください。そのときは、コメント欄からお願いします。(私の承認後に表示されます)
さて、今回のアフィリエイトは?
最後に「星の本」という言葉がでましたね。
楽しみながら星の勉強ができる本ということで、これにします。
「まんが天文学シリーズ」(作・画:加賀谷穣 監修:山岡 均)
すてきな星空・星座イラスト、ビジュアルで、我々をうっとーりさせてしまうKAGAYA画伯(http://www.kagayastudio.com/index.html
)が、まだ貧乏絵描き・加賀谷穣(失礼!!)であった頃に書かれた、「まんが天文学シリーズ」。
アマゾンや楽天にもなぜか置いていない、知る人ぞ知る名品(名マンガ)です。科学監修(山岡均先生)もしっかりしていますし、なによりKAGAYAさんの画がすばらしいです。MOMOさんほか、大人の人にもお勧めです。もちろんお子さんにも。
アストロアーツのオンラインショップからどうぞ。
http://www.astroarts.co.jp/shop/showcase/bk-manga-astro/index-j.shtml
このページの修正履歴
2011/10/27 新規作成
2011/10/29 「余談」を追加。細かい部分を修正。
2012/ 2/22 LARGE ORB UFO or SPHERE NEAR SUN のリンク先を変更。以前のは削除されていました。