前回は梅澤淳稔プロデューサーから、全国ロードショー中の「映画 スイートプリキュア♪とりもどせ!心がつなぐ奇跡のメロディ♪」の企画の成り立ちやスタッフ、ミラクルライトについて教えてもらいました。お次は監督の池田洋子さんに、映画の内容について聞いて行きましょう! プロデューサー補のギャルマト・ボグダンさんも加わって、ますます深い話に!?

映画、先週の土曜日(10月29日)公開だけど、みんなはもう観たかな? このインタビューをしているとき(9月中旬)の俺はまだ観てないんだよ。
観た人もこれからの人も、池田さんから語られる映画の話で心をつなげよう!


ふたりの友情や結びつきが重要

――いままでの池田さんのお仕事はテレビシリーズの演出が中心。それがいきなりの「映画 スイートプリキュア♪とりもどせ!心がつなぐ奇跡のメロディ♪」で監督に抜擢。梅澤さんからのご指名なんですよね。
池田 テレビシリーズの「プリキュア」の演出は、「スイートプリキュア♪」第8話(「チャララーン! セイレーンのニセ親友大作戦ニャ!」)がはじめてでした。そのあとに「劇場版もやってみないか?」と言われまして。そのときはまだ詳しい内容はなにも聞いていなくて、まさか劇場版とテレビシリーズが連動していてストーリーが密接にくっついているとは思わなかった。
すぐに「しまったなあ」って(笑)。
――シナリオはもう決まっていたんですか?
池田 プロットはほぼ固まっていました。
――池田さんを監督に起用したのは、〈楽しい雰囲気をつくりながら、重いテーマを浮き彫り〉にできるから。梅澤さんのつくりたい映画のイメージとぴったりだったそうです。
池田 そうなんですか。うーん、たしかにシリアスな展開になるとギャグを入れたくなる(笑)。

――池田さんは「ねぎぼうずのあさたろう」のシリーズディレクターや「ワンピース」の演出をたくさん手がけていたり、男の子向け作品が多いイメージがあります。
池田 女の子向け作品も一度やってみたかったんです。なんていうか男の子ものだと、バトルの合間に物語が入っているという印象があるけど、「プリキュア」はまず日常の話からバトルに展開していく。プリキュアに変身していない日常シーンで、キャラクターをどうみせられるか。なおかつストーリーとどう絡めるのかを考えるのが楽しいです。
――映画の見せ場は。

池田 4人目のプリキュア、キュアミューズと敵側のマイナーランドの国王メフィストは親子なんですね。ノイズという敵に操られていたけど、第36話「キラキラーン!心に届け、ミューズの想いニャ!」で洗脳がとけてもとのお父さんに戻った。映画はメフィストが人間界にいるところからスタートします。人間のふりをしてスーツを着ていますからね。
――スーツ! どんなだろう、想像できない。
池田 冒頭、けっこうすごいことになっていますよ。

――気になる……。映画はメフィストとアコちゃん(キュアミューズ)の物語でもあるんですか?
池田 そうですね。メフィストはダメパパというか、いまいちアコちゃんに尊敬されていない、頼りにならない(笑)。でも、娘がピンチになったときは、なんとか助けようと必死でがんばる。その姿を見て、アコちゃんは「わたしは愛されているんだな」と実感する。あと、映画ではプリキュアたちのいる世界から音楽がなくなってしまうんですけど、それがどうやら音楽の国の女王アフロディテがやったことらしい。

――アコちゃんのお母さん。
池田 うん。アコちゃんはなんとかしないといけないという苦しい立場。つらいですよね。でも、響たちはあえて遠くから見守っている。テーマは親子愛です。

――プリキュアたちもお母さんみたいな。
池田 アコちゃんもミューズとしてこれからも戦っていくという自覚もできる。だから、基本的にミューズがメインの展開になるんですけど、「スイートプリキュア♪」の物語はメロディとリズムからはじまっている。ふたりだけの関係から、ビートやミューズとどんどん仲間が増えていったけど、最後はプリキュアになる前から親友同士でもあるふたりの友情や結びつきが重要になってくる。その力でクレッシェンドキュアメロディにパワーアップするんです。


キュアモジューレを隠すため

――えっと、次は。
ボグダン コンニチハー!
――おっ?
池田 あ、来たんだ?
ボグダン どうも~! ボグダンです。映画「スイート」のパンフレットを持ってきたよ。
――ど、どうも。あれ? ボグダンさんは「映画 ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?」のプロデューサーでしたよね。今回もなにか?
ボグダン はい、プロデューサー補やってます。ヨロシク! あ、僕のことは気にしないで続けて続けてー。
――そのパンフレットが気になるんですが! ……へえー、劇場で売っているやつとは違うんですね。ん、ポスターでも使われているこの表紙の絵(リンク参照)、ミューズと、ミューズが仮面をつけていたときの姿がいっしょに描かれている。同一人物ですよね。
池田 いっしょですね。
――なんでふたりともいるんですか?
池田 まだこのパンフレットをつくったときは、テレビシリーズでは仮面のプリキュアがミューズって判明してなかったんです。この時点で仮面のプリキュアがいないと、バレちゃうかもしれない。あと、なんとなく映画のゲストキャラにも見える位置にいるじゃないですか?
――ちょっと特別な位置にいますよね。そっか、バレないためだったんだ。仕組んでますねえ。
池田 いろいろ工夫してあるんですよ。ミューズは胸の前で手を組んでいるんですけど、これ変身アイテムのキュアモジューレを隠すためなんです。
――あ、ほんとだ!
ボグダン (パンフをみて)このメロディ、すごい背が高い。頭と足が……長い!(笑)。
池田 ……長いっちゃ長いんだけどー。これはね、つま先だちですよ。ポスターはデザイン重視で多少遠近法を無視してつくってあるからいいの! ミューズも小さいけど、実際は頭ひとつ分くらいしか違わないんだから。
――はははは!「プリキュア」映画のパンフレットの表紙っていつも敵キャラクターとか、オリジナルキャラクターが載っていますけど、今回は特にいないんですね。
池田 パンフレットにはないですけど、ゲストキャラクターにスズという女の子が出てきます。メイジャーランドの住人でアコちゃんの友だち、重要な役割です。あと、プリキュアたちと戦うイケメン3人組、メイジャースリーが出てきます。
――メイジャーランドの3幹部なんですね。
池田 アフロディテの手下として登場します。
――マイナーランドのトリオ・ザ・マイナーは? 3対3で戦うと面白そうですけど。
池田 彼らはこれからテレビシリーズで大変なことになっていくので出ないんですよ。映画ではメイジャースリーをよろしくお願いします。


お父さんたちへのメッセージ

――「スイートプリキュア♪」は「音楽」をテーマにしています。映画ではどのように「音楽」を扱っているのでしょうか。
池田 映画ではプリキュアたちのいる世界から音楽が奪われてしまい、楽器を演奏しても音が鳴らなくなってしまいます。
――それが音楽の国メイジャーランドの女王アフロディテの仕業かもしれないんですよね。プリキュアたちのいる加音町から音楽を取ったらえらいことになりそうです。楽器大好きで常に触ってないと死んでしまうみたいな住人たちばかり。
池田 でも、こころから歌えば通じ合う。音が出ないから聞こえないはずの歌声がみんなに伝わるんです。
――それが「心がつなぐ奇跡のメロディ」なんですね。
池田 その曲を映画用につくってもらいました。エンディングもそうなんですよ。
――え、エンディングはテレビシリーズと違うんですか?「#キボウレインボウ#」じゃない?
池田 あ、エンディングテーマはふたつあるんです。物語が終わって、スタッフロールが流れるときに映画オリジナルの曲がかかる。「#キボウレインボウ#」はそのあとにちゃんと流れます。
ボグダン 「#キボウレインボウ#」はノンテロップです! 楽しいよ!
――おお! テレビだとまだメロディ、リズム、ビートの3人でしか踊ってないですけど、とうとうミューズもそこに加わる?
池田 もちろん! いままでハミィがいた位置にミューズが入ります。
――もともといたハミィはどこに行ってしまうんですか?
ボグダン なんかどこかに残るらしいよ。
――どこにですか?
ボグダン ただどこか別のところに(笑)。
池田 ちゃんといるので探してみてください。
――安心しました。ハミィ好きなんですよ。映画ではどう活躍するんでしょう。
池田 ハミィはですね。
ボグダン (パンフレットのハミィを見ながら)かわいいかわいい。かわいいー。
池田 おとぼけでピンチを切り抜けるシーンがあります。
ボグダン ニセチェストのシーンかわいいんだよな。青山さんやっぱりさすがー。
池田 すごいかわいかった。コミカルなシーンがほんとうに上手です。
――「プリキュアオールスターズDX」シリーズの作画監督、青山充さんですね。あと、ニセチェストって?
池田 アフロディテの命令でメイジャースリーが、プリキュアたちの持っているヒーリングチェストを奪いに来るんです。
ボグダン それを取られないように体でこうやって(ハミィの動きをまねて)隠している。こーんなでかいのに、こーんな。
池田 そこまで大きくはないでしょ。
――とても隠しきれないんですね(笑)。
ボグダン そうそう、無理!
池田 ハミィは天然ボケキャラなので動かしやすいんです。あと、ミラクルライトーンを振る大事な役目も……。
ボグダン キュアハミィ!
――え?
ボグダン ネットでは、この4人目のプリキュアがハミィじゃないかと言われていました。ミューズもハミィも額にハートがあるからね。キュアビートも猫の妖精だったから。
――いつかはハミィも変身しちゃうのかなあって思ってました。ハミィは絶対人間にはならないと梅澤さんが言っていてよかったーって。
ボグダン いえいえ、しますよー!
――ええ?
ボグダン 犬になるんです!
――い……?
池田 (キッパリ)しません。ハミィは人間たちのなかでちょこまかやっているのがいちばんいいですよ。
――最後に映画のみどころを。
池田 プリキュアたちがおのおのがんばっている姿を見ると「自分もがんばろう!」という気持ちになると思います。わたしたちスタッフもがんばっています!(笑)。
ボグダン 世界中のパパたちにも、しっかりしてもらわなきゃこまる(笑)。お父さんたちにもメッセージがあるよね。
池田 娘さんはお父さんの気持ちをちゃんとわかっているんだ、と思っていただけるはずです!
――ありがとうございます。池田さんは映画の監督は今回がはじめてですよね。どうでした?
池田 やっぱり大変でしたね。しんどくて……もう抜けたいみたいな(笑)。次やるならテレビシリーズとストーリーがつながっていない、映画オンリーの話をやってみたいです。
(加藤レイズナ)
梅澤淳稔プロデューサーインタビュー後編は11/4更新!