米国はアフガニスタンをどうするか、というのがテーマです。ウッドワードの冴えた筆致でオバマ政権の動きが活写されています。
普通に物語として読んでも大変面白いですが、読後の何らかの収穫を増やす上では、2つの点に注目する読み方がお勧めです。
一つは、日本に普通に育った者にはよく分からない「軍」というものの動きです。
戦争状態にあるときに、文民の意思決定に軍がどのような手段で、どのような影響を与えるのかということを知るのは、重要だと思います。
軍人の多くの発言が引用されていますから、リアルなケーススタディを読む充実感があります。
もう一つは、登場人物の発言にみられる様々なレトリック(=言葉の高等テクニック)です。
本に引用されているのは、印象的な発言ばかりですが、それらの発言の背景には、知的な蓄積があり、政治が言葉の戦いであることがよく分かります。
欧米世界で生き抜きたいとお考えの読者には学ぶところが大きいと思います。
使用される文脈とともにレトリックの解説を読むことができる機会はめったにないのではないでしょうか。
以上、軍を知るのに好適であること、言葉の対決の技術を知る良いテキストであることを意識して読まれると収穫の多い読書になるだろうと思います。