【抜粋版】高木浩光氏によるWebアクセスログと電子書籍閲覧履歴の違い

http://togetter.com/li/239573 から抜粋しました。
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経緯 1

発端はこの記事。内容は(ざっくり言うと)表題の通り。

''「マガストア」と「ビューン」の iPhone アプリが、ユーザーの閲覧履歴を根こそぎ漏らしている件
https://sites.google.com/site/epubprivacy/''

この記事を高木氏がとりあげ、Twitter等で拡散され、ニュースにとりあげられた。

経緯 2

これに対して、「Webページをブラウザで見てる時だってアクセスログとられてるんだから、それと一緒じゃないの?何が問題なの?」という声がちらほら発しられた。

確かに、アクセス解析によってどのページを何秒みて次にどのリンクをクリックしたかといった事は追跡可能であり、共通している部分もある。

Hiromitsu Takagi @HiromitsuTakagi

電子書籍のページ閲覧操作履歴を、Webのアクセスログと同一視して「何がいけないの?」という声が僅かながらあるようだが、Webは実現手段として当初からそれが必然であったために、歴史的に黙示の同意があると言えるのに対し、アプリはそうではない。

2012-01-10 19:17:38

以下、本題

これについて高木氏が、どこが違ってどう問題なのかを整理してくれた発言が以下。

Hiromitsu Takagi @HiromitsuTakagi

Webは、ハイパーリンクを用いたハイパーテキストとして登場した。つまり、読もうとする必要なページだけを要求し、取得して、閲覧するという点が特徴で、それはネットワーク回線の細い当時としては技術的に必然であった。一方、歴史的経緯から、アクセスログを取るのも当然となっていた。

2012-01-10 19:19:57
Hiromitsu Takagi @HiromitsuTakagi

そのため、アクセスログを解析することによって、閲覧者の嗜好を分析するということも可能になるわけだが、それはあくまでも結果として可能になったのであって、初めからそれを目的として、(必要もないのに)ページ単位の履歴を取得しようとしたわけではない。

2012-01-10 19:21:48
Hiromitsu Takagi @HiromitsuTakagi

そのようなWebにおいては、90年代後半から、閲覧動向を知られ得ることがプライバシー上の問題として取沙汰され、匿名で閲覧する権利を実現するための、いくつかの試みもなされた。ページ単位の履歴を取られるのは止められないから、閲覧者を特定できなくすることで回避しようとしたのであった。

2012-01-10 19:23:20
Hiromitsu Takagi @HiromitsuTakagi

この問題は、①IPアドレスは動的に変わるものが一般的となったこと、②cookieはサイト毎に独立であること、この2点から、概ね閲覧の匿名性は確保されていると考えられている。(第三者cookieの問題が残るが、完全なオプトアウトで許容という流れになっている。)

2012-01-10 19:25:34
Hiromitsu Takagi @HiromitsuTakagi

それに対して、電子書籍やアプリの場合は異なる。ハイパーリンク、ハイパーテキストと異なり、一冊の単位で配布されるものであり、閲覧者が見ようとしているページ毎にダウンロードすることは不必要であり(実際、産経新聞アプリもマガストアも、一括ダウンロードになっている)技術的必然性はない。

2012-01-10 19:28:01
Hiromitsu Takagi @HiromitsuTakagi

そのような電子書籍やアプリにおいて、ページ単位での閲覧動向を取得するというのは、「結果として生じた情報を活用した」にすぎないと言えるWebとは異なり、積極的にあえてわざわざ仕掛けを作って取得するものである。それを当然と受け止める社会通念はなく、黙示の同意があるとは言えない。

2012-01-10 19:31:11
Hiromitsu Takagi @HiromitsuTakagi

一方で、Google Analytics(GA)の仕組みが受け入れられてきた状況がある。最近ではアプリにもGAが埋め込まれるようになった。しかし、Googleはこれについて一定の配慮をしており、利用者はそれに従わなければならない。これについては、ミログのときに書いた通りなので略。

2012-01-10 19:33:17