自衛隊合憲の根拠もいえない防衛大臣、国会便覧を見ながら面接する選対委員長ーー人事の失敗が野田首相の命取りになる

政権を立て直す唯一のチャンスだった改造人事は政権の弱体化を招いてしまった 【photo】Getty images


こんな政権運営をしていたら、首相・野田佳彦は政治生命を賭ける消費増税法案の国会審議を行う今年4、5月ごろに息も絶え絶えの窮地に陥っているのではないか。

1月13日の内閣改造・民主党役員人事の後、原子力災害対策本部などの議事録未作成、新年金制度の財源試算の非公表、防衛相・田中直紀の資質を欠く言動に、防衛省沖縄防衛局長の「講話」が加わり、問題が続出。改造直後の記者会見で「最善かつ最強の布陣」と胸を張った野田の言葉が、1カ月も立たないうちにすっかり色あせた。

政権を立て直す唯一のチャンスだった改造人事は政権の弱体化を招いてしまった。

田中直紀の防衛大臣抜擢は輿石人事

 いま一度、先月13日夜の首相記者会見を思い出してみよう。防衛相に田中を起用した理由を聞かれ、こう答えた。

「豊富な政治的な経験、蓄積、そういうものを評価をさせていただきましたし、その参議院、良識の府のしかも外交防衛の委員長というのは重たい役割です、そういう職責を果たされてきたということも一つの判断基準になっています」

田中は民主党参院議員で最長老で、たしかに「政治的な経験」は豊富だ。しかし、「蓄積」があったのか、参院外交防衛委員長が「重たい役職」で職責を果たしたことが防衛相に起用することに値するのか…

 田中は防衛問題に関する野党質問にまともに答えられず、衆院予算委員会では元防衛相・石破茂が自衛隊が合憲とされる根拠を示すよう求められると、答えられず「先生の知見を拝聴しながら、よく理解したい」と頭を下げる始末。参院予算委では審議中に断りもなく抜け出し、コーヒーを飲んでいた。

この人事が幹事長・輿石東の発案であることを疑う人は党内にいない。野田の任命責任は免れないが、輿石の責任も重大だ。しかし、輿石の責任を問う声はほとんど上がらない。輿石が野田から絶大な信頼を受ける一方、元代表・小沢一郎とも話せる関係にあるからだ。
 

 しかし、政治家としての能力はいかほどか? 輿石を知る若手議員はこう言う。

「輿石さんは一次方程式しかない人。防衛相人事も、防衛相の役割とか、本人の資質とか、複数の方程式では考えない。単純に、前防衛相・一川保夫が参院議員だったから、次に参院から入閣する田中直紀も防衛相に当てはめるという考えだったのだろう」

 輿石は昨年9月の政権発足時、「党内融和」を図ることができる人物として起用された。しかし、現実には小沢グループを中心に計11人が昨年暮れ、離党。小沢も消費増税に強く反対し、最近、共同通信のインタビューでは「(閣議決定には)反対する。党執行部に『無理やり法案を通すとなったら反対だ』と昨年のうちに伝えた。(国会の採決でも)反対は反対だ。最初から反対と言っており、何かの拍子に賛成になったらおかしい」と造反することを公言している。

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