「トマトにメタボ改善成分」
そんな見出しが新聞各紙に掲載されたのは2月10日のことだった。新聞やテレビが一斉に報じたのは、京都大学農学研究科の河田照雄教授らがマウスを使った実験で、トマトから脂肪燃焼を促進する不飽和脂肪酸の一種を発見したという内容だった。
実験に使われた有効成分は人に換算するとトマトジュース600ml中の含有量に相当する。それを4週間投与されたマウスは、与えないマウスに比べ、血中や肝臓の中性脂肪が約3割減ったというのだ。
このニュースに対する世間の反応は早かった。たちまち、全国のスーパーマーケットの棚からトマトジュースが消えてしまったのだ。本誌記者が2月18日~20日にかけて都内のスーパーを回ったところ、キャロットジュースや野菜ジュースは見かけるものの、ほとんどのスーパーで、トマトジュースだけが売り切れ状態となっていた。
新聞、テレビなどの情報により、突如、生み出される健康食品ブームは、〝フードファディズム〟と呼ばれる。日本で初めてこの考え方を紹介した、群馬大学教育学部の高橋久仁子教授によると、フードファディズムとは食品や栄養が健康や病気に与える影響を過大評価し、信じることを指す。
具体的には、(1)健康への好影響を語る食品の流行、(2)適量を無視した過剰摂取、(3)食品に対する期待や不安の扇動などに大別できるという。
「今回のトマトのように、人々がある食品に過剰な健康効果を期待して、売り切れ現象が起きるのが典型的なフードファディズムなんです」(高橋教授)
次ページの年表を見てほしい。日本ではこれまでも「○○が××に効く」という情報に端を発する流行が何度も繰り返されてきた。特に'90年代以降は毎年のように新たなフードファディズムが生まれている。
現れては消えていった健康食品を表を参照しながら見ていくことにしよう。