オンライン福岡メソッド
福岡のITコミュニティのオンライン試行錯誤の記録
前世紀の終盤からインターネットが発達し、コードやノウハウを非常に自由に交換できるようになり、エンジニア達の知見は飛躍的に高度化していった。しかし、プロダクトの背景にある設計思想や、意識して言語化するのが難しい選択の基準など、インターネットで端的に説明しづらい情報の交換のほうに時間やコストのほとんどを割けるようになったため、リアルなコミュニケーションの場の重要性はますます高まっていた。
世界が新型コロナウイルス感染症と戦う中、ITコミュニティも大きな変化を迫られた。会場の人数制限、日々変わっていく対応、ソーシャルディスタンス……エンジニア達の活動にいままで想定していなかった制限が加わり、活動が一時的に停滞するコミュニティが続出した。
しかしITコミュニティは、常に変化に対応する人間達の集団であった。様々な工夫を進化に繋げ、新しいコミュニティの形を作り出そうと試行錯誤をすすめている。
本資料は、閲覧時点までの試行錯誤の記録である。今後も、福岡市が運営するエンジニアカフェに日々蓄積されていくオンラインでのノウハウを常に同じURLで閲覧できる。
本資料で主に対象とする読者は、勉強会コミュニティの主催者・参加者である。
事例は福岡でのITコミュニティイベントが中心だが、その他の地域でも活用可能な情報を盛り込むように努めた。
コミュニティを持続的に発展させるため、様々な工夫の事例を活用して欲しい。
ITコミュニティが主催するイベントには様々な形式が存在する。大まかに分類し、それぞれの特長、オンラインでの変化や工夫の事例について簡潔にまとめた。
これはあくまで一部のイベントから得た仮説であり、すべてのイベントを網羅した解決策を示しているわけではない。こうしたほうがいいよ、とか、こういう場合もあるのでは、などの提案は資料末尾のオンラインエンジニアカフェに寄せていただきたい。
Zoom+YouTube Live
ZoomからYouTube LIVEに中継する構成だと、
などのメリットがある。
しかし、普通にZoom画面にある「YouTubeにてライブ中」を選択するとその時点からYouTubeでの配信がスタートしてしまう。
カスタムストリーミングサービスでYouTubeを設定すると、配信準備が整った任意のタイミングで「配信を開始」することができる。
Zoomのサイトのスケジューリング画面に有る「ライブストリーム配信」タブで
「カスタムストリーミングサービスを設定」を選択する。
次にストリームURL・ストリームキーを準備する。
YouTube Studioでスケジュール設定した後に
図中の赤枠からコピペする。
ライブストリーム配信ページはYouTubeの公開アドレスなので、
画面右上にある矢印をクリックして
でてきた画面からコピペする。
イベント開始前にZoomの接続チェック後、
「カスタムストリーム配信サービスにてライブ中」を選択
YouTube Studioに移り、左上の赤枠で囲んだ部分にZoomの映像が表示され、音声も流れることを確認する
※最初はミュートになっている
※Zoomからの音声でなく、ブラウザからの音声であることを確認する
問題が無ければ、右上の「ライブ配信を開始」ボタンを押すと配信が開始される。
Zoom + OBS + YouTube Live
複数人が登壇するセッションなどで、下図のように画面に複数の要素を入れて配信したい場合がある。
そのときは、OBS studioなどのソフトウエアを使う。
Zoomの画面を切り抜いて画面に自由に配置できるので、プレゼン資料やカメラ画像、QRコードなどを自由に配置できる。
すべてクラウド上から配信
上記のOBS studioなどを利用した場合、配信操作を行うPCやその回線に求められるスペックがかなり高くなり、独立GPUや大容量のメモリを積む高級ゲーミングPCなどが必要。
そのため、配信にMicrosoft Azureを利用することをお勧めする。
Windows10イメージを使える環境をセットアップし、その中にZoomやOBS等の環境を構築する。
スペックを高めに指定しても数時間のイベントだけなら数百円程度であり、
回線はマイクロソフトのデータセンターの超高速回線なので配信担当者の場所の回線に左右されづらい。
複数の配信先にミラー配信
配信先をYouTubeだけでなく、Facebookなど別のサービスにもミラー配信したい場合は 「Rtmp Relayer」というソフトがおすすめ。
RTMP形式のプライベートサーバーを簡単に構築することができます。 そして受信した映像データを複数のサイトへミラーリング放送ができる。
ZoomやOBSの送信先のRTMPアドレスをRtmp Relayerのプライベートサーバーに設定し、Rtmp Relayer側でミラー配信先を複数指定できる。
PC
Zoomから直接シンプルにYouTubeに配信する場合は、登壇者、主催者共に高スペックPCである必要は無い。Zoomがスムーズに動作すればOK。
OBSで凝った画面を作り、すべての配信を自分の手元で行いたい場合、積めるだけ積んだ大容量のメモリと、NVENCが使えるNVIDIA GPUを搭載しているPCをお勧めする。
Azure上から配信する場合は特に高スペックなPCは必要としない。
スイッチング
OBS上でシーン切替ショートカットを駆使することでほとんどは対応可能だが、異なるデバイスからの映像(ラズパイからの出力をのせたいなど)の場合、登壇者側でHDMIスイッチャーなどを利用するとよい。
音声
Zoom等のクライアントソフト側で音量調整やノイズリダクションも行ってくれるので、ほとんどの場合はそこに任せるとよい。
音質などが重要な場合は、自動調整をカットすると音質が上がるため、静かな部屋と安定した回線、アンプを準備する等、カットした分の機能を自分で解決する必要がある。
登壇者側機材で音声がループしている場合もあるので、イヤホンやヘッドホンの装着をお願いするとトラブルが減る。
カメラ
以下の様な方法で高画質化は可能だが、登壇者の顔より資料を重視するイベントの場合、最近のPC内蔵カメラであれば登壇者各自に任せる形で十分なクオリティである。
照明
登壇者の顔を大きく切り抜く場合、顔に影が出来ないように照明を工夫するとよい。YouTubeにYouTuber向けのアドバイス動画がたくさんある。
忘れていたら運営から「ONにしてください」という通知が来ます
発表が終わったら運営側でOFFにします
登壇資料を公開してもらえるようにすると、新たな参加者や登壇者の呼び水になるので促進した方が良い。
以下の様なことに注意:
イベントが終了した後も関係を維持していくことが出来れば、その集団は「コミュニティ」へと発展していく可能性が高くなる。
そのため、参加ハードルの低い雑談の場所を設定することをおすすめしている。
例として、
のように、適度にクローズドなツールの方が濃いコミュニケーションを誘発できているケースが多い。
エンジニアフレンドリーシティ福岡は、エンジニアが集まる、活躍する、成長する街、福岡をエンジニアとともにつくる取り組みです。
現在、AIやIoTなどの最新テクノロジーを活用することで、新しいサービス・製品の提供や課題の解決を図る動きが加速しています。新たなサービスを生み出していくためには、テクノロジーの核心部分を担うエンジニアが不可欠で、また、技術レベルの維持向上とともに、誇りをもって楽しく働く環境も必要ですが、わが国ではともにまだ不足していると言われています。
そこで福岡市は、エンジニアと福岡市が協力し、エンジニアがここで働きたいと思うようなまちづくりを目指すムーブメントを新たに起こします。
具体的には、エンジニアコミュニティの見える化や、エンジニアのモチベーションアップ、また、エンジニアと多業種の企業や学校、学生との連携等に繋がる取組みを実施していきます。
福岡市をエンジニアの聖地にしよう。
エンジニアカフェは、そんな想いが起点となって生まれた官民一体のプロジェクトです。
個人やコミュニティを核としたエンジニア・エコシステムを創造していくべく、多様性を求め、
出会いが成長や協業へ繋がり、玉石混交なアウトプットが次々に生み出される場所です。
エンジニアやエンジニアに関わる方、エンジニアを目指す方からのさまざまな相談に対応、
活躍できる環境づくりをサポートいたします。
業種などの垣根を超え、エンジニア同士の多様多種なコミュニケーションを促進し、
エンジニアにとってあらゆる機会を創出します。
エンジニアカフェは、エンジニアが集まる、活躍する、成長する街、福岡の実現を目指す
「エンジニアフレンドリーシティ福岡」の取り組みのひとつとして誕生しました。
国内外から様々なエンジニアが集まる魅力的なイベントを開催
様々な技術トピックのイベントに会場を提供し、エンジニアの成長や活躍をサポートいたします。
エンジニアカフェでは、エンジニアの育成/成長/交流等に関連するイベント企画を受け付けています。
エンジニアやエンジニアに関わる方、エンジニアを目指す方からの相談に対応、
活躍できる環境づくりをサポートいたします。
エンジニアカフェは、「福岡市赤煉瓦文化館」という建物の中で運営しています。
福岡市赤煉瓦文化館(文化財名称「旧日本生命保険株式会社九州支店」)は、
明治42(1909)年に日本生命保険株式会社の社屋として竣工し、2019年で110周年を迎えます。
昭和44(1969)年に国の重要文化財に指定、福岡市に譲渡されました。
昭和47(1972)年からは福岡市立歴史資料館として利用されたのち、平成6(1994)年からは
「福岡市赤煉瓦文化館」として、2階の会議室(有料)が市民の文化活動の場として利用されています。
設計者は、日本近代建築の父とも称される辰野金吾工学博士。
中央停車場(東京駅)や日本銀行本店の設計者としても著名です。
当館は、赤煉瓦に白い花崗岩の帯を装飾的に使う「辰野式」フリー・クラシック様式の典型例として、辰野氏の代表作の一つとも評されています。
2021年6月現在、緊急事態宣言が出されるなどコロナ禍は引き続き予断を許さない状況にあり、エンジニアを取り巻く環境も激変していくことが考えられる。
しかし冒頭でも言及したとおり、元来エンジニアとは社会の変化にいち早く対応し、解決策を試行錯誤していく人たちであると筆者は信じている。
テクノロジーを社会に実装していくエンジニア達の未来がこれからも明るいことを願ってやまない。
発行者名:エンジニアフレンドリーシティ福岡 エンジニアカフェ
初版発行日:2021/06/17
初版発行イベント名:第五回 技術書同人誌博覧会
お問い合わせ先:info@engineercafe.jp
名称 Engineer Cafe ‒ Hacker Space Fukuoka ‒
TEL 080-6742-7231
開設年月 2019年8月
営業時間 9:00 - 22:00
相談受付時間 13:00 - 21:00
休館日 毎月最終月曜日(祝休日のときは翌平日)、12/29〜1/3
所在地 福岡市赤煉瓦文化館内 (福岡市中央区天神1丁目15番30号)