大学の収入を増やす「成績順授業料」のススメ 税金投入の前に国立大学はもっと工夫できる

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国立大学は、今後、自己収入を増やす工夫と努力がますます必要になる(写真:YMZK-Photo/PIXTA)

文部科学省は12月1日、衆議院文部科学委員会の閉会中審査で、現在年間約54万円の国立大学授業料が2031年度には93万円程度に上がるという試算を明らかにした。値上げが決まったわけではないが、どうしてこのような試算が出てきたのか、背景を解き明かそう。

国立大学の収入は、国の一般会計から出される運営費交付金が中心となっている。付属病院を除く国立大学の収入は、2013年度では2兆2692億円。そのうち、授業料や寄付金をはじめとする自己収入が32.5%、運営費交付金は51.9%である(科学研究費補助金の間接経費分の収入や産学連携等研究収入は、自己収入に含めている)。運営費交付金の元手は国民が払った税金であり、授業料収入が主体の私立大学とはここが大きな違いである。

運営費交付金と自己収入のバランス

国立大学なのだから、国が税金で運営を支える方針はよい。世界に通用する研究を進め、学生の質を向上させる教育に力を入れようとすれば、おカネがいる。実際、国はこれまでも科学振興予算に他の予算を上回る増額を認めてきた。しかし、増税には抵抗が強い国民にさらなる税金の投入を求める前に、国立大学として何か収入確保の工夫はできないだろうか。

冒頭の試算は、10月26日に開かれた財政制度等審議会財政制度分科会での議論が布石となっている。国立大学の運営費交付金を今後毎年度1%ずつ減らし、大学側が努力して自己収入を毎年度1.6%ずつ増やせば、2031年度には国立大学全体で運営費交付金と自己収入がほぼ同額になるとの資料が提出された。

冒頭の2031年度とは、この資料が指すところの国立大学全体の運営費交付金と自己収入がほぼ同額になる年度を意味する。財政制度等審議会では、授業料の試算まではしていない。単に、国立大学が授業料や寄付金など自己収入を確保すべく、まだまだ工夫する余地があることを示唆したまでである。そうすることで、国の財政状況に左右されず、安定的な大学運営の基盤を築くことができるだろう。

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