Drift Diary XV

iPad初感

Posted by drikin on 2010年1月27日 20:00
iPad Apple - iPad - The best way to experience the web, email, & photos

今日は、Appleファン待望の祭り。iPadの発表日でした。あまりうまくまとめられる自信はありませんが、ちょっと頑張って、自分なりの初感をブログにまとめてみようと思います。

あらかじめ、おことわりしておくと、僕は、今日のイベントには参加してませんw 実機も触ってなくて、発表時は、絶賛仕事中で、スタンドアップミーティングしたりしてたので、情報源は、gdgtの速報と、AppleのiPadのHPと、@hokayanさんのタイムラインくらいの状態です。

自分が一番感じたのは、「iPadは、本質的にはマスに向けた製品」だと言うことと、「パーソナルコンピュータのパーソナルを更に次の次元に押し上げた」という事です。

もともとタブレットMacの噂は、ここ数年ずっと囁かれていたわけで、個人的にも、ずっと期待し続けていたのですが、心のどこかで、出ないだろうなぁと思っていました。というのも、当初、噂されていたタブレットMacは、Mac OS Xベースで、MacBook(Pro)から、キーボードを取り外したような製品でした。これは、LeopardくらいのOS Xの完成度を以ってすれば、必要なコンポーネントもそろっていて、比較的簡単に作れたでしょう。ただ、問題は、キーボードなしMacBookを作ったとき、このタブレットMacの市場は明らかにニッチだということです。こんなタブレットMacが出たら、僕は欲しいけど、爆発的な広がりを見せるとは思えず、今のAppleの戦略として、出すとは思えないと思っていたからです。なので、期待しつつも、半ば諦めていました。

しかし、実際にフタを開けてみると、発表されたのは、タブレットMacではなく、タブレットiPhone。iPhone OSをベースにした製品でした。これは、非常に納得できる戦略で、やはり、あくまでもマスに向けた製品を作ってきたなぁと思ったわけです。ただ、あくまでも、本質的にはマスに向けた製品であると思いました。

本質的と強調している理由は、マスに向けた製品だけど、最初からマスに受け入れられる製品ではないからです。これは、iPhone成功の方程式を解いてみるとわかるのですが、iPhoneにおいても、Appleは、最初から、マスに向けた携帯電話を目指していたのではないかと思うのです。ただ、新しい製品が広がるには段階が必要です。今でこそiPhoneは、マスに認知された製品として、爆発的に広がりを見せてますが、発売当初は、ギーク向けスマートフォンであると、言われ続けていました。実際、最初はギークの心を掴み、初代→3G→3GSと3年もかけて、製品を成熟させた結果、最終的にマスに訴求する製品として認知され、今に至ってると思います。Appleは、最初はギークに受け入れられ(もっと言うとギークの前には信者に受け入れられ、次にギーク)、彼らが先導者/広告塔となって、マスに広がらせて行く事に成功させたのだと思います。

iPadに関しても、同じで、最終的にはマスに受け入れられる製品だと感じたのですが、iPhoneとの最大の違いは、ギークの心が掴みきれないところだと思っています。もちろん新しもの好き、Apple好きは、飛びつくと思います(僕も買うと思います)が、iPhoneの時のようにギークがこぞって、買い付けるかと言うと、難しい気がしています。なぜなら、ギークが欲しいのは、タブレットiPhoneではなくて、タブレットMacだったからです。iPhoneは、本質的にマス向けの製品でありながら、がっちりギークの心を掴んだところに成功の秘訣があったと思うので、iPadで同じ事が起こせるのか、非常に興味深いです。

次に、パーソナルコンピュータを次の次元に押し上げたなぁと、感銘を受けた部分ですが、これは、ひとえに、製品の完成度であり、GUIです。これについては、カタログスペックで語れる話ではないので、まずは、iPadのページからリンクされているビデオを見てもらうと、何となく感じるのですが、ユーザー体験や、使い勝手の作り込みが半端じゃないです。今どきPCは当たり前のように、一般家庭に普及していると言われていますが、実際には、まだまだ使えてない(使いこなせてない)人達も沢山居ます。そういう人達の多くは、やはり、現状のパソコンの使い勝手が大きな障害になってると思います。iPadなら、そういう人達にも十分にインターネットの便利さや、パソコンの機能を使いこなせるのではないかと、思いました。

ただ、ここにも、懸念があります。Flashに対応しなかった事です。Appleが、HTML5を促進し、これからは、Flashが無くても、HTML5で十分ダイナミックなコンテンツが実現できる世界をAppleが牽引していて、それを実践して行きたいと言う意気込みは十分理解できるし、その姿勢は称賛に値するとすら思うのですが、現実には、マスな人達が見たいと思うサイトは、メーカーであり、テレビ局であり、映画の公式サイトであり、これらは、現状、100%といってもいいくらいFlashを採用しています。そもそも、今どきは、mixiのサンシャイン牧場や、Facebookのcafeworldが動かなければ、多くのネットユーザーに受け入れられないでしょう。Appleが、本当にマスに訴えたい製品を作りたければ、現状、Flashへの対応は必須だったと思います。逆に言えば、今、Flashにさえ対応していたら、いきなり最初からマスに訴求する製品になり得たのでは?とすら思ってしまいます。実際、Flashに対応していたら、母親の為に買ってあげたいと思ったからです。この点に関しては、Appleが意地を通し切ってしまった事が裏目に出るのでは?思いました。

最後に、最近、マイブームでもあるeBook。そのeBookリーダーとしてのiPadですが、これは、Kindleと棲み分けれるような気がしています。そもそも、従来のeBookは、e-inkという紙のような、表現能力を持ち、一度表示したら、ページを切り替えるまで、ほとんど電力を消費しない特殊なディスプレイを備えた製品で、1週間くらいは、充電無しで遣う事が出来ます。iPadが10時間のバッテリー駆動を謳っていても、次元が違うのです。1週間と10時間の違いは、一度e-inkの製品を体験すると、やっぱり別物だと感じられると思います。eBookのそれは、印字クオリティと相まって、まさに本の体験に似ています。ただ、iPadにも、カラー表示や、軽快な動作、魅力的なUIなど、e-inkベースのeBookデバイスでは、逆立ちしても実現できなそうな魅力もあります。

ここは、あくまでも、想像の域を超えませんが、リアルな書籍でも、カラーで、きらびやかな雑誌と、モノクロで、文章メインの文庫があって、棲み分けられています。iPadとeBookでも、iPadでのコンテンツは、写真や、色を活用した、雑誌的コンテンツ。eBookでは、文章メインの小説的なコンテンツを閲覧するために活用される気がしています。ただ、みんながみんな、それぞれのデバイスを持つとは思えないので、どちらか一つで済まそうとしたときには、iPadに軍配が上がると思います。

ということで、柄にもなく、だらだらと長文を書いてしまいましたが、実際に手に触ってみると、これらの印象はまた変わって行くと思うので、いち早く手に入れて、楽しめればいいなぁと思っています。

さぁ、これから基調講演のビデオみよっとw

追記

マルチタスクについて、今回、マルチタスクは解禁されませんでしが、nexus oneなどAndroid陣営の追い込みに焦る事なく、不用意にマルチタスク機能を解放しなかった事は、本当に正しい判断だったと思います。これは、iPhone 3GSを発表したときに、不用意に解像度を上げてこなかったときにも感心したのですが、ここら辺の、Appleのディシジョンは、本当に、地に足がついていると言うか、恐るべしです。

特にMac OS XをベースにしたiPhone OSにおいては、マルチタスクを解放する事自体は、技術的には、容易なので、下手なマネージメントなら、すぐにでも解放したくなりそうですが、解放して、破綻したら、せっかく築き上げたiPhoneのアドバンテージすら、失いかねないので、焦らず、きちんと作り込むあたり、今のAppleの強さに繋がってると思います。手強い!

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