低価格のGoogle Nexus TabletがもたらすAndroidタブレット時代の幕開け

先日、大手半導体メーカーNVIDIAが発表した「Kai」によって、199ドルという安価で高性能なAndroidタブレットがこの夏にも登場するという。その先陣を切りそうなのが、他でもないGoogleのタブレットだ。このタブレットは世界のタブレット市場を大きく変えるかもしれない。

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NVIDIAが発表した「Kai」

Googleによるタブレット革命

タブレットの普及はこれから

タブレットという単語はもはや一般的なものになり、特にiPadなどはかなり普及しているように言われている。
しかし、実際のところは、米国ではようやくスマホユーザーの4人に1人がタブレットを所有したところ。日本でも普及率は7-8%程度に留まる

ではタブレットの市場は小さいのかというと、そういうわけではなさそうだ。急速に普及が進むスマートフォンの後を追うように、タブレットの需要は急拡大する。

米Gartnerによれば、2012年のタブレット販売台数は全世界で1億台の大台を突破し、2016年には3億7000万台(2011年の6倍)ものタブレットが販売されると予測されている。この予測はいい意味で外れると見ているが、いずれにしてもタブレットは間もなく普及期に入ることは間違いないだろう。

iPadしか売れない?


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Androidは「価格」で支持されている

現在、タブレット市場の絶対的な覇者として君臨しているのがiPadで、全体の6割強を占めている。スマートフォンではAndroidがシェアを伸ばしているが、タブレットではむしろAndroid陣営はシェアを落としており、今後もその牙城は揺るがなそうに見える。

だが、一方で米IDGの調査では、ビジネスパーソンの44%は今後1年以内にAndroidタブレットを購入する予定で、iPadの27%を上回った。「価格」を重視するユーザーがAndroidタブレットを選択しており、「ブランド」「デザイン」でiPadを支持する人よりも多かったというのが重要な点だ。

実際、「チープでひどい端末」などと言われたAmazonのKindle Fireは199ドルという価格を武器に、一時はタブレット市場の3割近いシェアを獲得。Androidタブレットで最も売れた製品になっている。Google公式の「Play Store」に対応し、性能もいいタブレットが安価に提供されれば、一気にブレイクする可能性が高い。

Google Nexus 7 tabletが革命を起こす


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台湾ASUSが開発パートナーと言われている

Googleによって昨年末より開発が進められており、今月末のGoogle I/Oで発表が噂されているNexus 7 Tabletは、まさにこのブレイクする条件を満たしたタブレットだ。クアッドコアプロセッサを搭載し、性能も十分。Googleが開発しているだけに、最新のOSで公式のPlay Storeにも対応することはほぼ確実だ。

そして、199ドルという価格。これは(新しい)iPadの499ドル、iPad2の399ドルに対して半額以下という設定。これは革命的な安値だ。
台湾Acerも7インチのKai採用タブレットIconia Tab A110を199ドルで投入し、これに続く見込み。さらにAmazonがこれを黙って見逃すとも思えず、新型Kindle Fireの開発が進んでいたのに未だ発表されていないところを見ると、Googleの動きを見て戦略を修正した可能性も十分にある。

いずれにしても、Google Nexus 7 tabletが起こす革命は、タブレット市場全体を大きく拡大し、とりわけAndroidタブレットのシェア獲得に貢献することになると思われる。

Androidタブレットの時代はもうちょっと先?

タブレット向けのアプリがお粗末なAndroid

しかし、Androidタブレットがいくら安くなっても、ユーザーを大満足させられるようになるには、しばらく時間がかかるだろう。

その主たる原因は、タブレット向けのアプリの状況がかなりお粗末なところだ。iPad向けのアプリが発売から2年の時を経てかなり充実してきたのに対し、ただでさえもAndroidアプリは収益化が難しいと言われている中で、これまでAndroidタブレットはユーザーも少なかったのだから、開発が進んでいなかったのも致し方がないところではある。

Googleはアプリ内課金機能を整備するなど収益化の改善に取り組むとともに、Android 4.0以降は断片化などのアプリ開発上の問題に取り組む姿勢を見せていることから、時が経つにつれアプリ問題は解消すると期待したいところだ。

アプリはダメでもAndroidタブレットの普及は進む


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タブレット利用目的は「ネットブック的」

しかし、アプリの品揃えはAndroidタブレットの普及にはあまり影響しないと思われる。
インターネットコムとgooリサーチの調査によれば、タブレット利用シーンの多くは「Web閲覧」「メール」「SNS利用」といったところがメインで、これらについては現時点でもAndroidタブレットで十分に要求を満たせるだろう。

また、Androidスマートフォンを利用するユーザーにとっても、iPadではなくAndroidタブレットを選ぶ理由はある。

それは、Appleが先日の「WWDC 2012」において、今後Googleとの決別を進め、エコシステムの閉鎖性をより高めていく方針であることが明確になったことによる。スマートフォンとタブレットでデータの共有ができなかったりシステムが異なるというのは不便極まりないので、iOSかAndroidかに統一するのが自然だろう。
タブレット側のOSにスマホを合わせるよりは、スマホのOSにタブレットを合わせるというのが一般的な動きだと思われるので、AndroidスマホユーザーのAndroidタブレットに対する潜在的なニーズはかなり高いのではないだろうか。

Androidタブレット革命、その後

GoogleのNexus 7 Tabletがもたらす革命によって、(米国では昨年もそうだったが)今年の秋冬商戦はタブレットが主役となる可能性が高い。

そして、誰もがスマホ、タブレット、ノートPCをシーンによって使い分けるような時代もそう遠くないのではないかと思わせる。
まだNexus Tabletが正式発表もされていない段階ではあるが、きっとiPad誕生以来の大きな動きがやってくるだろう。